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事業用物件とは?用途地域・設備規格・収益性の基礎を総まとめ

事業用物件とは?用途地域・設備規格・収益性の基礎を総まとめ

事業用物件とは?用途地域・設備規格・収益性の基礎を総まとめ

不動産投資や事業展開において、事業用物件は重要な位置を占めています。特に名古屋市のような都市部では、オフィスビルや店舗、倉庫など多様な事業用物件が存在し、投資機会も豊富です。しかし、事業用物件の選定には多角的な視点が必要で、用途地域の制限、設備規格、収益性など、居住用物件とは異なる専門知識が求められます。
本記事では、事業用不動産に特化したWIN SQUAREの専門知識をもとに、事業用物件を「定義・種類」「用途地域」「設備規格」「収益性・リスク」の4つの側面から包括的に解説し、投資や事業展開を検討する際に必要な基礎知識を提供します。

 

1. 事業用物件の基礎知識

1-1. 事業用物件の定義と種類

事業用物件とは、利益の獲得を目的として保有・利用される不動産を指します。これは投資目的で購入する収益物件も含まれ、不動産投資の主要な対象となっています。

事業用物件は大きく分けて、オフィスや店舗などの商業用不動産と、マンション・アパート・一戸建てといった居住用不動産があります。具体的な種類としては以下のようなものがあります:

  • 店舗物件:小売店、飲食店、サービス業など
  • 事務所物件:オフィスビル、貸事務所など
  • 倉庫物件:一般倉庫、冷凍倉庫、物流施設など
  • 工場物件:製造業向けの生産施設
  • その他:駐車場、遊休地、医療施設など

税務上の観点では、「事業としての不動産貸付け」に該当するかどうかの判断基準として、貸室・アパート等は概ね10室以上、独立家屋の貸付けは概ね5棟以上という目安が設けられています。この基準を満たすと事業所得として扱われ、税務上の取り扱いが変わります。

1-2. 居住用物件との主な違い

事業用物件と居住用物件には、以下のような重要な違いがあります:

項目 事業用物件 居住用物件
目的 収益獲得 居住
消費税 課税対象(家賃、権利金、更新料など) 非課税
初期費用 高額(保証金、内装工事費など) 比較的低額
入居審査 事業内容、規模、売上重視 個人の信用力重視
契約形態 定期借家契約の場合がある 普通借家契約が一般的

特に消費税の取り扱いは重要なポイントです。事業用物件の賃貸借契約における家賃、権利金、更新料、返還されない敷金などは消費税の課税対象となります。一方で、居住用の賃貸は非課税です。

また、入居審査では事業内容や規模、売上などが重視され、借り手は自身の事業の「お客様」を考慮して契約する必要があります。契約形態についても、定期借家契約の場合があるなど、居住用物件とは異なる特約や条件が設けられる場合があります。

✓ポイント:事業用物件は収益性を重視した物件であり、税務や契約面で居住用物件とは大きく異なる特徴を持っています。投資を検討する際は、これらの違いを十分理解した上で判断することが重要です。

 

2. 用途地域と建築物の制限

2-1. 用途地域とは

用途地域とは、都市計画法に基づき行政が指定する土地の利用目的を定めた区分であり、全13種類に分類されます。この制度により、計画的な街づくりが行われ、住環境の保護や商業活動の促進が図られています。

用途地域によって、建てられる建物の種類、建ぺい率、容積率、高さ制限などが異なり、街の景観や住環境に大きく影響します。事業用物件を選ぶ際は、その物件がどの用途地域に属しているかを確認することで、将来的な制約や可能性を把握できます。

2-2. 商業地域の特徴と建てられる建物

商業地域は、銀行、映画館、飲食店、百貨店などが集まる地域で、住宅や小規模な工場も建てられます。特にターミナル駅周辺や大都市の都心部に指定されることが多く、オフィス街を形成する傾向があります。

商業地域の主な特徴は以下の通りです:

  • 多様な用途の建物を建てることができ、物件として売却しやすい
  • 建築制限が他の地域と比べて緩やか
  • 北側斜線制限や日影規制が適用されない
  • 高層ビルや高層マンションが密集しやすい
  • 建ぺい率は80%(特定地区や角地緩和等で90%まで許容される場合もある)、容積率は概ね300%から1300%まで設定可能(道路幅等の特殊要件により200%となる例外的なケースもある)

これらの特徴により、商業地域の事業用物件は高い収益性が期待できる一方で、価格も相応に高くなる傾向があります。

2-3. 用途変更の注意点

既存の建物の用途を変更する際には、建築基準法に基づく手続きが必要となる場合があります。特に重要なのは以下のケースです:

事務所から店舗(特殊建築物)への用途変更の場合、異業種への変更で、かつ変更部分の床面積が200㎡を超える場合に建築確認申請が必要となります。これは、建物の構造や防災性が不十分である可能性を考慮するためです。

一方、店舗から事務所への用途変更や、類似業種間の変更では、既存設備で十分とみなされるため、建築確認申請は不要です。

✓ポイント:用途地域の制限を理解することで、物件の活用可能性や将来的な制約を予測できます。特に商業地域は事業用物件として高いポテンシャルを持っていますが、用途変更時には法的手続きが必要になる場合があるため、事前の確認が重要です。

 

3. 設備規格と安全性

3-1. 耐震基準の重要性

近年、オフィス選びにおいて耐震性の高さは前提条件となっています。これは、テナントや投資家が安全性を重視する傾向が強まっているためです。

耐震基準は、1981年(昭和56年)に施行された「新耐震基準」とそれ以前の「旧耐震基準」に大別されます。

  • 旧耐震基準:震度5程度の地震で倒壊しないことを基準
  • 新耐震基準:震度6強~7程度の大地震に対しても倒壊しない設計

1995年の阪神・淡路大震災では、旧耐震基準の建物が甚大な被害を受けたのに対し、新耐震基準の建物は大きな揺れに耐え、その安全性が実証されました。

物件探しの際は、「昭和58年(1983年)以降に竣工した物件」を目安にするか、建築確認済証の交付日が1981年6月1日以降であることを確認することで、新耐震基準に適合していることを確実に判断できます。

なお、旧耐震基準の建物でも、適切な耐震補強工事を行うことで、新耐震基準に準じた耐震性を確保することが可能です。

参考サイト:国土交通省「住宅・建築物の耐震化について」

3-2. 最新の耐震技術

近年では、高い耐震性を確保するために「制震構造」や「免震構造」が採用されています。

制震構造は、建物内部にダンパーを設置し、地震の振動エネルギーを吸収して揺れを軽減する技術です。高層ビルなどで広く採用され、既存建物にも後付け可能という特徴があります。

免震構造は、建物と地盤の間に免震装置を設置し、地震の揺れを直接建物に伝えないようにする技術です。揺れが極めて小さく、病院やデータセンターなど内部機器の損傷を防ぎたい施設で多く採用されています。

3-3. 特定の事業用物件に求められる設備基準

事業用物件は、その用途に応じて詳細な設備基準が法令で定められている場合があります。例えば、営業倉庫の「1類倉庫」には最も厳しい施設設備基準が設けられています。

主な要件には以下があります:
- 倉庫の所有権または賃借権の確保
- 建築基準法や消防法などの関係法令への適合性
- 土地への定着性、軸組み・外壁・床の強度
- 水の浸透防止構造、床の防湿措置、遮熱措置
- 耐火・防火性能、災害防止上有効な構造
- 防火区画、消火器具、防犯構造、そ害防止設備

これらの基準を満たさなければ、倉庫業の登録自体ができません。

3-4. その他の物件確認事項

アスベストやPCB(ポリ塩化ビフェニル)の利用の有無は、売却時の告知事項と規定されており、確認が必須です。これらの有害物質が使用されている場合、除去費用が発生する可能性があります。

また、過去の修繕履歴やメンテナンス状況も、物件の価値や将来的な費用に影響するため、把握しておくべき重要事項です。

✓ポイント:事業用物件では安全性が収益性に直結します。新耐震基準への適合は最低条件として、用途に応じた特別な設備基準や有害物質の有無も事前に確認することで、将来的なリスクを回避できます。

 

4. 収益性とリスク

事業用物件とは?用途地域・設備規格・収益性の基礎を総まとめ

4-1. 収益の二本柱:インカムゲインとキャピタルゲイン

事業用不動産投資で得られる利益には、家賃収入など継続的に得られる「インカムゲイン」と、物件売却によって得られる「キャピタルゲイン」の2種類があります。

インカムゲインは安定的な収益が見込める一方で、キャピタルゲインは価格変動リスクを伴うハイリスク・ハイリターンな性質を持ちます。投資目的によって、どちらを重視するかが変わります。

長期的な資産形成を目指す場合はインカムゲイン重視、短期的な利益確保を目指す場合はキャピタルゲイン重視の戦略が一般的です。

4-2. 収益性を左右する要素とコスト

事業用物件の収益性は、以下の要素によって大きく左右されます:

維持管理費 固定資産税、修繕費用、管理会社への報酬など、物件を維持するための費用がかかります。物件情報を確認する際には、年間の家賃収入を物件購入価格で割った「表面利回り」だけでなく、これらの維持管理費を考慮した「実質利回り」を重視することが重要です。

敷金・保証金の返還 テナントから預かっている敷金や保証金は、退去時に返還義務が発生するため、そのための資金計画が必要です。

4-3. 事業用不動産特有のリスクと対策

事業用不動産投資には、以下のような特有のリスクが存在します:

投資金額の大きさ 銀行借り入れを活用すれば自己資金が少なくても投資可能ですが、その分、失敗したときのリスクも大きくなることを認識しておく必要があります。

流動性の低さ 不動産は株式などに比べて流動性が低く、売却に時間がかかる可能性があります。相場によっては損失が出ることもあります。

法令・条例変更のリスク 都市計画法、環境保護法、税制など、様々な行政法規や条例の制定・変更により、追加的な費用負担や権利制限が発生する可能性があります。特に既存不適格物件の場合、建て替え時に現行基準への適合が必要となることがあります。

特定施設に関するリスク 水質汚濁防止法や土壌汚染対策法に規定される特定施設が設置されている場合、汚染調査義務、除去義務、損害賠償義務などが発生し、多額の費用負担を伴う可能性があります。

テナント依存リスク 少数のテナントに依存する物件やシングルテナント物件では、そのテナントの業績悪化や退去が収益に大きな影響を与える可能性があります。

災害リスク 火災、地震、液状化、津波、暴風雨などの災害により不動産が毀損・滅失・劣化するリスクがあり、収益の減少や価値の下落につながる可能性があります。

税務リスク 個人が売却益を得た場合は譲渡所得税、法人の場合は法人税が課税されます。法人の場合、売却時期を調整することで、法人税の負担を軽減できる可能性があります。

売却時の準備リスク 売却前に空室を減らし、レントロールや修繕履歴などの関連書類を整備しておくことが重要です。また、土地の境界や土壌汚染、地中埋設物の有無なども事前に確認し、告知書に記載漏れがないようにする必要があります。これらを怠ると「契約不適合責任」を問われる可能性があります。

✓ポイント:事業用不動産投資では高い収益性が期待できる一方で、多様なリスクが存在します。実質利回りを重視した収益計算と、各種リスクへの対策を事前に検討することで、安定した投資成果を得ることができます。

 

まとめ

事業用物件の取得、運用、売却は、居住用物件とは異なる複雑な特性や多くの専門知識を要します。特に名古屋市のような都市部では、用途地域の制限や設備基準、収益性の評価など、様々な要素を総合的に判断する必要があります。

物件の選定から契約、そしてその後の管理・売却に至るまで、定義、用途地域、設備規格、収益性、そして潜在的なリスクを多角的に理解し、計画的に進めることが成功の鍵となります。

特に重要なのは、表面的な利回りだけでなく、実質利回りや将来的なリスクを含めた総合的な判断です。また、法令遵守や安全性の確保も、長期的な収益性を左右する重要な要素です。

自身で全てを把握することが難しい場合も多いため、事業用不動産に強い専門の不動産会社や専門家へ相談することを強く推奨します。WIN SQUAREのような事業用物件・収益不動産に特化した専門会社であれば、豊富な経験と専門知識をもとに、最適な投資戦略の立案から売却まで、総合的なサポートを提供できます。

事業用物件投資を成功させるためには、正確な知識と適切な判断、そして信頼できるパートナーとの連携が不可欠です。この記事で紹介した基礎知識を参考に、慎重かつ戦略的なアプローチで事業用物件投資に取り組んでいただければと思います。