ブログ

事業用物件を相続したらどうする?売却と運用の選択肢を徹底解説

事業用物件を相続したらどうする?売却と運用の選択肢を徹底解説

事業用物件の相続は、一般の居住用不動産とは異なる手続きや考慮点があります。特に名古屋市のような不動産市場が活発な地域では、相続した事業用物件の取り扱いによって将来の資産状況が大きく変わります。名古屋市で事業用物件・収益不動産に特化したサポートを提供するWIN SQUAREが、相続後の選択肢と適切な判断基準を解説します。

目次

1. はじめに:事業用物件を相続したらまず何をすべき?
 ∟相続発生からの流れと基本的な対応
2. 事業用物件とは?相続される主なケースと特徴
 ∟倉庫・店舗・賃貸マンションなどの種類と概要
3. 相続後に必要な手続き一覧
 ∟登記変更・名義書換・税務申告の流れ
4. 選択肢① 売却する場合のメリット・デメリット
 ∟現金化による資産整理/売却時に注意すべき点
5. 選択肢② 継続運用する場合のメリット・デメリット
 ∟賃貸収入を得る/管理負担やリスクについて
6. 不動産価値の見極め方とプロへの相談ポイント
 ∟査定の取り方・地域性・将来性の見方
7. 税金面の比較:売却 vs 運用 どちらが得?
 ∟譲渡所得税・固定資産税・相続税の観点から解説
8. 家族との共有・相続人とのトラブルを避けるには
 ∟共有名義のリスク/分割協議・遺産分割のコツ
9. こんなケースは要注意!専門家に相談すべき状況>
 ∟遺産分割協議が進まない・負動産の可能性など
10. まとめ

 

はじめに:事業用物件を相続したらまず何をすべき?

事業用物件を相続した場合、まずは冷静な状況把握と今後の方針決定が重要です。感情的な判断ではなく、物件の状態、収益性、市場価値などの客観的な情報をもとに検討しましょう。

相続発生からの基本的な流れは、相続の発生確認から始まり、相続財産の調査、遺言書確認、相続人の確定、遺産分割協議、必要な法的手続きの実施、そして事業継続か売却かの判断へと進みます。

相続した事業用物件に関する意思決定の前に、現在の賃貸状況や収益性、建物の状態などの情報収集を徹底的に行うことがポイントです。また、相続税の申告期限(10ヶ月以内)を念頭に置いて計画的に手続きを進めることも重要です。

 

事業用物件とは?相続される主なケースと特徴

事業用物件とは、事業の用に供される不動産のことで、商業施設、オフィスビル、工場・倉庫、収益不動産などが含まれます。

相続されるケースとしては、親が経営していた事業用物件、不動産投資として所有していた収益物件、自社ビルなど法人所有だった物件の株式相続に伴うもの、土地所有者として貸し付けていた底地などが一般的です。

事業用物件の特徴として、居住用不動産と比較して高額な取引となることが多く、相続税評価額も高くなりがちです。また、賃借人との賃貸借契約が存在する場合が多く、契約内容が物件の価値に直結します。

 

相続後に必要な手続き一覧

1. 相続登記

不動産の名義を被相続人から相続人に変更する手続きです。2024年4月1日以降は相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に申請する必要があります。

2. 開業届の提出

事業用物件を継続して運用する場合、事業開始日から1ヶ月以内に「個人事業の開廃業等届出書」を提出します。

3. 準確定申告

被相続人の死亡時点での確定申告として、相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内に行います。

4. 減価償却方法の届出

建物を相続した場合、相続人は新たに減価償却方法の届出書を提出します。

5. 賃貸借契約の名義変更

賃借人がいる場合は、賃貸借契約の賃貸人名義を変更し、家賃の振込先変更などの手続きを行います。

 

選択肢① 売却する場合のメリット・デメリット

メリット

1. 現金化による資産の流動性確保

相続税の納付資金を確保したり、他の投資に資金を振り向けたりすることが可能になります。

2. 管理の手間とリスクからの解放

物件管理や賃借人対応など、不動産経営の負担から解放されます。

3. 相続人間の公平な分配が容易に

複数の相続人がいる場合、物件を売却して現金化することで、公平な分配が容易になります。

デメリット

1. 長期的な収益機会の喪失

安定した賃料収入の継続的な収益機会を失うことになります。

2. 売却タイミングによる価格変動リスク

急いで売却する必要がある場合は不利な条件での取引になりがちです。

3. 譲渡所得税の負担

物件売却時には譲渡所得税が発生します。所有期間によって税率が異なります。

売却時に注意すべき点

複数の不動産会社から査定を取り、市場価値を適切に把握しましょう。また、譲渡所得税の特例適用可能性を検討し、賃借人の権利(借地借家法による保護)に注意が必要です。

 

選択肢② 継続運用する場合のメリット・デメリット

メリット

1. 安定した収益の確保

良好な立地条件や堅実な賃借人が入居している事業用物件は、長期にわたって安定した賃料収入をもたらします。

2. 資産価値の維持・上昇の可能性

適切に管理・運用することで、不動産の資産価値を維持・向上させることができます。

3. 相続税の納税猶予や特例の活用

一定の条件下で相続税の納税猶予や小規模宅地等の特例などの税制優遇を受けられる可能性があります。

デメリット

1. 管理の手間と責任

物件の維持管理、賃借人対応、修繕計画の策定と実行など、継続的な手間と責任が発生します。

2. 空室リスク・賃料下落リスク

景気変動や競合物件の増加により、空室が発生したり賃料が下落したりするリスクがあります。

3. 修繕・更新投資の必要性

建物の経年劣化に伴い、定期的な修繕や設備更新が必要となります。

継続運用時のポイント

プロの管理会社の活用を検討し、長期的な修繕計画と資金計画を立てましょう。また、市場動向を定期的にチェックし、必要に応じて賃料の見直しや物件のバリューアップを検討しましょう。

 

不動産価値の見極め方とプロへの相談ポイント

査定の取り方

1. 複数の不動産会社から査定を取る

最低でも3社以上の不動産会社から査定を取ることで、市場価値の適正な範囲を把握できます。

2. 査定方法を確認する

収益還元法、原価法、取引事例比較法など、複合的な評価を行う不動産会社を選びましょう。

3. 根拠を詳細に説明してもらう

査定額の算出根拠、特に収益性に基づく評価の詳細を確認しましょう。

地域性・将来性の見方

周辺の開発計画をチェックし、同種物件の需給バランスを確認しましょう。また、対象エリアの産業構造の変化を考慮し、将来的な需要の変化を予測することも重要です。

 

税金面の比較:売却 vs 運用 どちらが得?

売却した場合の税金

譲渡所得税が課税されます。譲渡所得は「売却価格 - (取得費 + 譲渡費用)」で計算され、所有期間によって税率が異なります:
- 短期所有(5年以下):39.63% - 長期所有(5年超):20.315%

また、相続開始から3年10ヶ月以内に売却した場合の相続税の取得費加算の特例も検討すべきポイントです。

運用し続けた場合の税金

賃貸収入に対する不動産所得税、毎年の固定資産税・都市計画税がかかります。また、事業用または賃貸用の宅地については、相続税評価額を最大80%減額できる「小規模宅地等の特例」があります。

税金面での比較表
項目 売却する場合 運用し続ける場合
一時的な税負担 譲渡所得税(20.315%〜39.63%) 相続税のみ(特例適用で軽減可能)
継続的な税負担 なし 不動産所得税、固定資産税・都市計画税
節税対策 相続税の取得費加算の特例 小規模宅地等の特例、減価償却による節税

 

家族との共有・相続人とのトラブルを避けるには

共有名義のリスク

1. 意思決定の難しさ

重要な意思決定に全員の合意が必要となり、意見の相違による停滞が生じやすくなります。

2. 責任と負担の不均衡

管理や税務申告などの実務を特定の相続人が担うことが多く、負担の不均衡が不満につながりやすいです。

分割協議・遺産分割のコツ

1. 早期の話し合いを心がける

感情的対立が深まる前に、早い段階で相続人全員による話し合いの場を設けましょう。

2. 専門家の仲介を活用する

中立的な立場の専門家に仲介してもらうことで、感情的な対立を避けやすくなります。

3. 公平な価値評価を行う

事業用物件の市場価値を複数の専門家に評価してもらい、客観的な数字をもとに話し合いましょう。

共有状態を避けるための対策

1. 現物分割よりも換価分割を優先する

売却して現金化してから分ける方法を検討しましょう。

2. 代償分割の活用

事業経験のある特定の相続人に不動産を相続させ、他の相続人には現金や他の資産で代償する方法です。

 

こんなケースは要注意!専門家に相談すべき状況

遺産分割協議が進まないケース

相続人間で意見が対立している場合や、相続人の中に行方不明者がいる場合、認知症の方がいる場合などは、弁護士による助言が必要です。

負動産(負債が資産価値を上回る物件)の可能性

老朽化した建物で大規模修繕が必要な場合や、賃料収入が経費を下回っている場合は、専門家による調査が必要です。

複雑な権利関係がある場合

底地・借地権が絡む物件や、共有持分がある物件、抵当権などの担保権が設定されている場合は、権利関係が複雑になります。

 

まとめ

事業用物件の相続は、一般の居住用不動産と比べて手続きが複雑で、判断が難しいケースが多くあります。以下のポイントを押さえて対応しましょう:

1. 相続後の選択肢を冷静に比較検討する

売却と継続運用、それぞれのメリット・デメリットを経済合理性の観点から比較しましょう。

2. 必要な法的・税務的手続きを適時に行う

相続登記、開業届、準確定申告など、必要な手続きを期限内に確実に行いましょう。

3. 専門家のサポートを積極的に活用する

複雑な相続案件では、専門家による総合的なアドバイスが不可欠です。

4. 相続人間のコミュニケーションを大切にする

早期の話し合いと公平な価値評価に基づく合意形成を心がけましょう。

名古屋市内の事業用物件・収益不動産に特化したWIN SQUAREでは、相続から売却・運用までのあらゆる場面で専門的なサポートを提供しています。事業用物件の相続でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。