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収益物件を法人化するメリット・デメリットを事例で解説

収益物件を法人化するメリット・デメリットを事例で解説

不動産投資は以前に比べて身近になり、名古屋市をはじめとした愛知県内でも、会社員が副業として収益物件を運営するケースが増えています。収益物件からの収入が一定額に達すると、多くの投資家が検討するのが「法人化」という選択肢です。

法人化により税負担を軽減できる可能性がある一方で、コストや手間も増加するため、慎重な判断が必要になります。この記事では、収益物件の法人化について、メリットやデメリット、検討すべきタイミング、手続きまで具体的な事例を交えながら解説します。

 

不動産投資の法人化とは

不動産投資の法人化とは、資産管理を目的とした法人を設立し、不動産投資の管理主体を個人から法人へ移行することを指します。法人化する主な理由は、節税効果が期待できるためです。

法人は個人に比べて経費として計上できる範囲が広がり、課税所得を低く抑えやすくなります。法人と個人では課せられる税金の種類や税率が異なるため、所得水準によっては大きな節税効果を生み出します。

 

法人化のメリット・デメリット

収益物件を法人化するメリット・デメリットを事例で解説

法人化のメリット

節税効果

個人の所得税は所得が増えるほど税率が最大45%まで上昇します(下表は限界税率、復興特別所得税含む)。一方、中小法人の法人税率は年800万円以下の部分:15%(軽減税率)、超:23.2%(国税部分)となります。

個人所得税の限界税率

課税所得 所得税率 復興特別所得税含む
695万円 ~ 899万9千円 20% 約20.42%
900万円 ~ 1,799万9千円 33% 約33.69%

法人税:国税の標準税率(15%/23.2%)に加え、地方法人税・住民税・事業税を含めた実効税率は地域・規模により異なります。例:東京都の中小法人で約35.43%

課税所得が900万円を超えるあたりから法人化による節税効果が期待されるとされていますが、社会保険料負担や均等割、家族役員の可否などで差が出るため、個別試算が必要です。

個人事業主では事業主自身の人件費は経費にできませんが、法人化すれば役員報酬として経費計上できます。ただし、役員報酬は定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与以外は損金不算入となり、期中改定は原則不可のため設定は慎重に行う必要があります。

事例:不動産収入200万円、諸経費10万円、人件費30万円の場合
- 個人:課税所得190万円
- 法人:課税所得160万円

個人では損失を最大3年間繰り越せますが、法人では最大10年間繰り越すことができます

消費税について:原則として基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円超なら当該年は課税事業者となります。加えて、前年上半期などの特定期間の要件でも課税になる場合があります。新設法人は特定新規設立法人に該当すると初期2期も免税にならないことがあります。

資金調達のしやすさ

法人は個人よりも金融機関からの信用を得やすい場合がありますが、決算内容や担保・借入姿勢次第で評価が分かれます。減価償却は会計基準に基づき計画的に行いますが、税務上の方法選択や特例の活用により、一定の範囲で利益・資金繰りの平準化が可能です。

相続・贈与対策

不動産は分割が困難ですが、法人化することで株式として所有するため、株式を分割相続することで遺産分割が容易になります。

法人化のデメリット

設立・維持コストの増加

株式会社なら概算20~30万円(登録免許税15万円、定款認証手数料3~5万円※、謄本発行等)、合同会社なら6万円~(資本金×0.7%)程度のコストがかかります。個人所有の不動産を法人に移管する場合には不動産取得税・登録免許税のほか、個人側の譲渡所得課税(時価譲渡扱い)や消費税(建物等課税資産)の論点も発生し、税理士への継続的な報酬も必要になります。

※電子定款なら印紙4万円が不要。資本金規模等により手数料は変動

赤字でも税負担が発生

法人は赤字であっても、「法人住民税均等割」が発生します。標準税率では毎年最低7万円(市町村5万+都道府県2万)、資本金1,000万円超~1億円以下・従業員50人以下で標準18万円となります(自治体により差異があります)。

社会保険への加入義務

法人化すると社会保険への加入が義務付けられ、会社も保険料の半分を負担しなければなりません。

長期保有物件売却時の税率が不利

個人の場合、所有期間が5年を超える不動産を売却した際は20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)の優遇税率が適用されますが、法人の場合は実効税率(約30~35%)が高くなります。

事業規模が小さい場合は法人化による手間や費用負担の方がメリットを上回ってしまう可能性があります。法人化のメリットがデメリットを上回る目安は、課税売上1,000万円以上、課税所得900万円以上とされています。

 

法人化を検討すべきタイミング

課税所得が900万円を超えた時

個人の所得税は所得に応じて税率が上がる超過累進課税ですが、法人税は比較的一定です。課税所得が900万円を超えるあたりから法人化による節税効果が大きくなります。

課税売上が1,000万円を超えた時

原則として基準期間(2年前)の課税売上高が1,000万円超なら当該年は課税事業者となります。このタイミングで法人化する場合、新設法人は原則免税ですが、特定新規設立法人特定期間判定により課税事業者になる場合があるため、個別に判定が必要です。

事業規模の拡大や相続対策を考えている場合

今後不動産経営の事業規模を拡大する予定がある場合や、相続税対策として所得分散を図りたい場合も法人化が有効です。

法人化の最適なタイミングは個人の状況により大きく異なります。将来の事業計画や家族構成、相続対策の必要性なども総合的に考慮して判断することが重要です。

 

まとめ

不動産投資の法人化は、節税効果、資金調達の容易さ、相続対策など多くのメリットがあります。特に、課税所得が900万円を超える、あるいは課税売上が1,000万円を超えるような事業規模であれば、法人化による税負担軽減効果は大きいといえるでしょう。

しかし、設立・維持コストの発生、赤字でも税負担、社会保険への加入義務、長期保有物件売却時の税率の不利といったデメリットも存在します。

名古屋市で収益物件を保有されている皆様におかれましても、法人化の検討にあたっては、家賃収入額、不動産の規模、将来の事業計画などを総合的に判断することが重要です。不動産取得税などの詳細については愛知県の公式案内もご参照ください。

専門的な知識が必要となる手続きや税務対策も多いため、WIN SQUAREでは収益物件に関するご相談を承っております。法人化を含めた不動産投資戦略についてお気軽にご相談ください。適切な判断により、より効率的で収益性の高い不動産投資を実現していきましょう。